令和6年度同時改定に向けての理学療法士の働き方①

医療従事者【働き方】

 

 

令4年7月10日に行われた参議院選挙で日本理学療法士連盟の組織代表である小川氏が落選し、同じく日本維新の会より山口氏も落選しました。

 

理学療法士の代表として国会議員となり国政でリハビリ職に関する発言ができる方がいなくなり、今後の令和6年度の診療報酬・介護報酬同時改定が悲惨な結果になるのではないか?と悲観する声が多くあります。

 

今回は、令和6年度の診療報酬・介護報酬同時改定で起こる可能性がある改定内容と療法士への影響を考え、今後の働き方を具体的に考えていきましょう。

 

 

 

 

 

令和6年度同時改定に向けての理学療法士の働き方

 

 

 

まずは、令和6年度の同時改定で起こる可能性があるであろう項目をおさらいしましょう。

 

令和6年度の同時改定では、これまでの診療報酬・介護報酬のたびに少しずつ議題に上がっていた様々な問題が一気に改定される可能性があります。

 

 

 

 

①回復期リハビリ病棟の包括化

 

 

 

 

 

 

日本慢性期医療協会の武久洋三会長・池端幸彦副会長・橋本康子副会長は、2020年10月のオンラインでの記者会見で「そろそろリハビリに関する包括評価を導入してはどうか」と提案しています。

 

回復期リハビリテーション病棟では、疾患別リハビリ料の点数のみが出来高で、他の項目は入院料の中に包括評価されています。

 

これに対し、地域包括ケア病棟では、リハビリも含めた多くの項目が入院料に包括評価されています。

と回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟を比較しました。

 

 

包括評価となれば「粗診粗療」(つまりリハビリに力を入れない)の病院が出てくることが懸念されます。

 

 

しかし、回復期リハビリテーション病棟には「リハビリテーション実績指数」というアウトカム評価が導入されているため、「リハビリに力を入れず、ADL改善効果が出ていない病棟」は自動的に淘汰されていくという仕組みがあることを強調しています。

 

 

 

もし包括化された場合、20分1単位という縛りがなくなり後述する疾患別リハビリテーション料包括化と相まって回復期リハ病棟に多くのリハビリ職は必要でしょうか?

 

 

 

 

 

 

②疾患別リハビリテーション料の単価統一化

 

 

 

 

 

現在の疾患別リハビリテーション料

 

・心大血管疾患リハビリ料(I)(1単位)205点
・脳血管疾患等リハビリ料(I)(1単位):245点
・廃用症候群リハビリ料(I)(1単位):180点
・運動器リハビリ料(I)(1単位):185点
・呼吸器リハビリ料(I)(1単位):175点

 

 

上記のように疾患別ごとに設定されており、「点数の格差」を生んでいることが問題視されていました。

 

つまり、社会復帰や自立を目指す上で、患者に脳血管疾患がなくとも、その道のりは非常に大変であるが、

 

疾患によって点数は低く設定されてしまうと、現場の不満や経営面でも点数の高い患者を選択してしまうという問題があることを指摘しています。

 

 

 

日本慢性期医療協会の武久洋三会長と橋本康子副会長は、2021年7月15日の定例記者会見で

 

 

疾患別リハビリのように「1単位20分」・「患者とリハビリ専門職が1対1」で行われるリハビリのみでなく、以下を想定していると発言しています。

 

 

・リハビリ提供時間の自由化
・1対1の個別リハではなく集団・他職種協同で行なう
・患者の状態に応じた柔軟なリハビリ提供
・「リハビリの効果」(例えばFIM利得20点以上)を診療報酬で評価する

 

 

上記は遅くとも2024年度の改定までに「点数の格差を解消する」ことを求めています

 

 

 

もし、疾患別リハビリ料の格差が解消されるとリハビリテーション料の収益が激減しその影響は働くリハビリ職の収入に直結してしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

③訪問看護ステーションの看護師配置基準を6割へ

 

 

 

 

 

令和2年11月の社保審・介護給付費分科会では、

 

厚労省が提案したのは、介護保険の訪問看護の運営基準を見直すことを提案しました。

 

 

・サービス提供を担う職員に占める看護職の割合が6割以上であることを、一定の経過期間を挟んで必須の要件に。
・これを満たさない事業所は介護報酬を得ることができなくなる(指定を受けられない)。
・訪問リハは、医師の指示が明確である医療機関や老健施設から提供されるべきだと考えている

 

 

 

これが訪問看護ステーションの看護師等と理学療法士等の比率が6:4の人員配置基準問題です。

 

 

厚労省は訪問看護の役割はあくまで「疾病、負傷で継続して療養する状態にある高齢者らに対し、療養上の世話、または必要な診療の補助を行うもの」としています。

 

 

 

日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会は、

 

この制度改正により、介護保険利用者だけでも約8万人の方がサービスを受けることができなくなり、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は約5千人が雇用を失うと見込んでいると声明を発表しました。

 

 

 

 

 

 

 

審議会委員の意見は?

 

 

全国健康保険協会・安藤伸樹理事長

 

「看護職員の割合を要件化することに賛成。8割以上くらいが本来のあるべき姿。リハ職が繰り返し訪問する場合の一定回数以降の減算や、そもそもの単位数の見直しについても検討すべき」

 

 

日本看護協会・岡島さおり常任理事

 

 

一定割合以上の看護職の配置が必要だ。今後ますます増えていく中重度者、医療的ケアを必要とする人の在宅療養を支えるためには、訪問看護に従事する看護職を増やしていく必要がある」

 

 

全国老人保健施設協会・東憲太郎会長

 

 

「訪問看護のリハビリが増えており、老健に併設している訪問リハ事業所の経営を圧迫しているという報告もある。そうしたことからも厚労省案に賛成だ」

 

 

日本医師会・江澤和彦常任理事

 

 

「訪問看護ステーションからリハ職が提供するサービスは看護業務の一環。訪問リハとは異なる。そうしたことを踏まえた見直しが必要」

 

 

 

 

④訪問看護リハビリステーションの対象を要介護3以上へ

 

 

 

 

 

財政制度等審議会・財政制度分科会の会合では、

 

要介護1・2の高齢者に対する訪問介護と通所介護について、全国の市町村がそれぞれ介護予防などを展開する総合事業の枠組みに移すべきと改めて主張しています。

 

 

財務省は今回、要介護1・2の高齢者を「軽度者」と定義しています。

 

 

 

また、財政健全化に向けた建議令和3年5月21日財政制度等審議会では、

 

 

近年、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハビリテーションといった医療系の居宅サービス費用が、総費用や要介護者数の伸びを大きく上回って増加している。

 

原則「通院が困難な利用者」に対して給付することとされているが、軽度者の費用の伸びが顕著な状況であり、実態として「通院が困難な利用者」以外にもサービスが提供されていないか、速やかに把握を行なう必要がある。

 

算定要件を明確化して、算定要件を満たす請求のみが適切に行われるようにすべきである。としています。

 

 

確かに訪問リハビリを受ける患者の中には通院や外出を行なっている方も多いです。

 

今後はより算定要件が具体的に厳しくなり、要介護度による制約も出てくるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

リハビリ職のお給料はどうなるのか?

 

 

 

 

 

・回復期リハビリテーション病棟の包括化
・疾患別リハビリの単位統一化
・訪問看護ステーションの看護師配置基準を6割へ
・訪問リハビリの対象者を要介護3以上へ

 

 

上記のいずれの改定が行われた際は、リハビリテーション職種にとって改悪であり給与にも影響します。

 

しかし、月給を下げることは制度上難しく、労働者の同意が必要であったり大量離職を招く恐れもあるため考えにくいです。

 

 

一番可能性として考えられるのは、ボーナス(賞与)の大幅カットです。

 

 

法律において、勤務先が賞与(ボーナス)を必ず支給しなければならないとは定められていません。
つまり、賞与(ボーナス)の減額を行ったり支給をしなかったりといった行為が違法となることは原則としてありません。

 

 

しかし、労働契約や就業規則、賃金規定などにおいて賞与(ボーナス)の支給を確約し、
その支給条件も明確に示している場合は、原則として企業側は賞与(ボーナス)の支払い義務を負うこととなります。

 

しかし、支給額まで明記している勤務先は少ないでしょうから減額は大いにあり得ます

 

 

 

まとめ

 

 

 

今後、月給が少なく設定され賞与が多いタイプの勤務先は要注意かも知れません。

 

また、ボーナス(賞与)払いで住宅ローンやカーローンを組んで計算している療法士は令和6年度改定はよく注意しておいた方がいいでしょう。

 

収入が『現状維持』or『下がる』可能性しかなく上がる見込みがないのだから、

 

転職や副業といった他の分野等へのリスクヘッジも今後大切となってくるでしょう。

 

 

 

 

 

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